凝縮物質:結晶格子におけるメソスケールの原子操作
Nature 653, 8115 doi: 10.1038/s41586-026-10431-9
レーザー、イオントラップ、走査探針を用いた個々の原子の制御は、物質に対する我々の理解を一変させ、量子科学におけるブレイクスルーを可能にした。しかし、こうした制御を三次元(3D)固体やメソスコピックスケール全体へと拡張することは、依然として根本的な課題となっている。電子顕微鏡における電子線照射は原子の変位を誘起することが知られており、それによる原子の操作が提案・実証されている。しかし、反復的かつ決定論的な制御は、まだ実現されていない。今回我々は、3D結晶における決定論的な原子操作を実証し、150 nm × 100 nm × 13 nmの体積にわたって、ユーザーが規定した4万個を超える欠陥の秩序配列を数分以内に作製した。我々は、20 pm未満のスケールの精度で指向された電子ビームを用いて、磁性半導体CrSBr中の個々のCr原子を、選択した格子間サイトへと誘導することによって、空孔–格子間原子複合体を作製した。得られた不純物アレイは、ホスト格子内に埋め込まれたメソスケール結晶を形成しており、これは、室温かつ顕微鏡外でも安定な状態を維持する、人工物質の新しい形態である。我々は、Cr原子の変位を追跡することによって、欠陥構造が予測可能になる条件を特定した。我々の計算からは、これらの欠陥が、欠陥内の光学遷移、欠陥間の動力学的・クーロン相互作用を伴う相関不純物状態を形成することが示唆された。これによって、メソスコピックスケール、そして可能性としては巨視的スケールでの、原子欠陥操作のための一般化可能なプラットフォームが確立され、決定論的な色中心配置、多体格子モデルの量子シミュレーション、原子スケールの製造を含む、スケーラブルな量子技術の機会が開かれる。

