物性物理学:菱面体構造の薄層グラファイトにおける次元横断型異常ホール効果
Nature 653, 8114 doi: 10.1038/s41586-026-10471-1
異常ホール効果(AHE)は、時間反転対称性が破れた物質で生じるものであり、磁気秩序と電子の軌道運動との相互関連の典型である。二次元(2D)系では、AHEは、面内カイラル軌道運動に付随する面直軌道磁化と結合している。試料の厚さが垂直方向のコヒーレンス輸送長lzをはるかに超える三次元(3D)系では、AHEは実質的には、厚さ平均された2D対応系であり、依然として面内軌道運動に起因する面直軌道磁化に支配されている。今回我々は、多層菱面体グラフェンにおいて、面内軌道磁化と面直軌道磁化の両方を結合する、根本的に新しいタイプのAHEを実験により観測したことを報告する。このAHEは、面内磁場および面直磁場の両方の下で顕著なホール抵抗ヒステリシスによって示される。この状態は、電子間相互作用によって駆動されて時間反転対称性、鏡像対称性、回転対称性を自発的に破る、特異な金属相から生じる。我々は、3~15層にわたる複数のデバイスを測定することで、この現象が2~5 nmという中間的な厚さの範囲内でのみ現れることを見いだした。理論計算からは、このウィンドウ内のキャリアが、2D平面内および2D平面外でコヒーレントな軌道運動を維持できることが示された。総合するとこれらの結果は、試料の厚さが、原子間隔よりはるかに大きいがlzとは同程度である2Dと3Dの間の未踏の「次元横断的」な領域が、新しい物質の状態である次元横断型AHEが出現する場であることを明らかにしている。今回の知見は、従来のものとは別のクラスのAHEを指し示すものであり、これにより、次元横断的な景観における相関物理およびトポロジカル物理についての未開拓モデルが切り開かれる。

