Article

気候科学:中緯度冬季降水量の不確かな力学的応答

Nature 653, 8113 doi: 10.1038/s41586-026-10474-y

降水量変化を理解することは、社会や生態系にとって極めて重要である。さまざまな研究によって、降水量の傾向に対する人為起源の強制と内部変動のそれぞれの寄与が明らかになっているが、観測されたパターンとシミュレートされたパターンの間には差異が残っている。北半球の冬季については、こうした不一致の原因が、観測される傾向を支配する強制されていない内部変動であるとされることが多い。しかし、気候モデルが人間の強制に対する降水量の全体的な応答を過小評価していることを示す証拠がますます増えている。今回我々は、熱力学的寄与が気候モデルによっておおむね再現されるのに対し、力学的寄与はより大きく乖離している可能性があることを示す。我々の手法は、1950~2022年の冬季の降水量の傾向における内部変動から、人為起源の強制による熱力学的成分と力学的成分を分離して、傾向の乖離に対するそれらの寄与を調べるというものである。地中海地域では、モデルシミュレーションによる強制された力学的信号は観測された力学的傾向の約10%しか説明できず、検出は困難だった。人為起源の排出が継続している状況では、予測される循環の応答が強化されて観測された傾向のパターンにより類似するようになっていた。観測記録の内部変動がこの類似性に寄与している可能性があるが、一連の結果は、地域的な冬季の降水量の傾向を形作る上で、力学的応答が不確かではあるものの無視できない役割を果たしつつある可能性を示している。気候モデルにおける強制された大規模循環の応答を信頼性高く表現することは、地域的な降水量の予測の確かさを向上させる上で重要であり続ける。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度