神経科学:哺乳類の新皮質における遺伝子調節ネットワークの適応進化
Nature 653, 8113 doi: 10.1038/s41586-026-10226-y
哺乳類は、より複雑な脳を進化させてきた。例えば、興奮性投射ニューロン(ExN)が存在する背側皮質は、祖先型の哺乳類では単層だったものが、多様なExN、すなわち終脳内投射(IT)ニューロン)および終脳外投射(ET)ニューロンのサブタイプに富んだ多層の新皮質へと変化を遂げた。そしてこれにより、脳の接続性と機能性を向上させる特殊化した投射系が確立された。これは、現生の爬虫類や鳥類のExNが、単層状あるいは擬似層状の円柱構造を持つこととは対照的である。しかし、このような哺乳類固有の適応の根底にある仕組みについては明らかにされていない。今回我々は、マウスのExNサブタイプにおける遺伝子発現とシス調節エレメント(CRE)と推定されるエレメントの全体像を比較し、さらに種間解析を行うことによって、哺乳類特異的なCREを同定した。これらのCREは、転写因子ZBTB18(別名RP58、ZFP238、ZNF238)が結合するサブセットを含み、ITニューロンやETニューロンのサブタイプの運命決定をする遺伝子や、接続性を決定する遺伝子と関連していた。これらの遺伝子は、知的発達障害や自閉症に関与することが知られている。マウスのExNでZbtb18を欠失させると、標的遺伝子の発現調節が異常となり、分子的多様性が低下した。また、皮質脊髄間投射と脳梁投射が減少し、半球内皮質間では、前頭前皮質への連合投射が増加していた。これらの表現型は、非哺乳類の脳に類似していた。ZBTB18結合モチーフは、脳梁に投射するITニューロン形成に関わる遺伝子のCREと推定される領域に特に多く分布し、哺乳類で特異的に高い保存性を示した。本研究によって、新皮質に存在するExNのアイデンティティーと接続性に不可欠な遺伝子発現調節ノードにおける、重要な構成要素と哺乳類特異的な進化的適応が明らかになった。

