分子生物学:PIEZO2による力の選択性の分子基盤
Nature 653, 8113 doi: 10.1038/s41586-026-10182-7
PIEZOは機械力感受性性イオンチャネルで、力を電気化学シグナルに変換する。PIEZO1は、膜の伸展やせん断応力など多様な刺激に反応する一方、PIEZO2は一般に細胞をへし曲げる力を感知するよう調整されている。PIEZO2の機能の専門化が、触覚を仲介するといったその特異な生理的役割の基盤になっていると見られている。しかし、PIEZO2はPIEZO1と構造的に非常によく似ているにもかかわらず、この選択性をどのような仕組みで実現しているのかは明らかになっていない。今回我々は、単一分子MINFLUX蛍光ナノスコピー法と電気生理学手法とを組み合わせて、無傷の細胞内でPIEZO2のコンホメーション状態とチャネルの開閉との関連を明らかにした。PIEZO2はPIEZO1よりも本質的に剛性が高く、一見すると理解しがたいが、異なった機械刺激がそれぞれのチャネルにおいて正反対のコンホメーション応答と開閉応答を引き起こすことが分かった。このような独特な開閉特性は、アクチン細胞骨格との連結が一因となって生じ、我々は、この相互作用に必要な係留分子がフィラミンB(FLNB)であることを突き止めた。この複合体がPIEZO2への力の伝達の仕方を変化させて、細胞をへし曲げる力に対する感受性と選択性を高めるのである。PIEZO2とFLNBは体性感覚ニューロンで同時に発現しており、皮膚の機械力感受性求心神経の終末器官では数十ナノメートルの範囲に共局在している。これらの知見は、PIEZO2が専門化した機械力受容器として働く理由の説明に役立ち、組織や器官系を越えて細胞が多様な機械刺激を読み解く仕組みを理解するための分子レベルの見取り図となる。

