Article

神経科学:Agoutiは環境手掛かりを統合して父性行動を調節する

Nature 652, 8110 doi: 10.1038/s41586-026-10123-4

哺乳類では父親による仔の保護はまれであり、その出現を支配する神経機構はほとんど分かっていない。今回我々は、ヨスジクサマウス(Rhabdomys pumilio)の自然下の父性行動を利用して、脳規模のcFosマッピング、単一核RNA塩基配列解読法、ウイルスを介した遺伝子摂動、および環境操作を統合して、雄による育仔における自然の多様性の神経基盤を解析した。その結果、社会・環境条件が他親の雄による育仔の個体差を駆動しており、具体的には、授乳後の社会的隔離は父親による仔の保護を促進する一方で、高密度集団での社会生活は殺仔を増加させることが見いだされた。こうした保護における自然の多様性は、内側視索前野の神経活動および脳領域間で相関する活動の変化に対応していた。内側視索前野内のニューロンにおけるアグーチシグナル伝達タンパク質(Agouti)の発現は集団飼育によって増加し、保護とは負に相関していて、そしてAgoutiの過剰発現は、操作前には寛容であったマウスにおいて保護を減少させ、殺仔を増加させた。自然的な操作からはさらに、Agoutiが食餌の入手可能性や空腹感ではなく、長期的な飼育条件を統合していることが示された。今回の知見は、父親による仔の保護の多様性は、父性能力の有無ではなく、保存された視床下部とメラノコルチンシグナル伝達機構の文脈依存的な調節を反映していることを明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度