Article

考古学:火おこしの最古の証拠

Nature 649, 8097 doi: 10.1038/s41586-025-09855-6

火おこしは人類に固有の新機軸であり、道具の製作、象徴文化、社会的コミュニケーションといった他の複雑な行動とは一線を画すものである。制御された火の使用は適応の機会をもたらし、これが人類の進化に重大な影響を与えた。その利点としては、暖かさ、捕食者からの防御、調理、社会的相互作用の中心となる照明された空間の創出が挙げられる。火の使用は100万年にわたって発達し、自然の火の採取から火の維持、そして最終的には火おこしへと進歩した。しかし、自然の燃焼と人為的な燃焼の識別が困難なため、火の使用がいつ、どのように進化したかを明らかにすることは容易でない。地球化学的な方法によって、加熱された堆積物の解釈は進歩しているものの、意図的な火おこしを示す決定的な証拠はこれまで得られていなかった。本論文で我々は、英国バーナムの40万年前の埋没地表面における火おこしの証拠を示す。この場所では、加熱された堆積物と火で割れたフリント製の握斧が、2点の黄鉄鉱片と共に発見された。黄鉄鉱は、後の時代にフリントと打ち合わせて火花を生じさせるのに用いられた鉱物である。地質学的調査から黄鉄鉱がこの地域ではほとんど産出しないことが示されており、これは、黄鉄鉱片が火おこしのために意図的にこの場所に持ち込まれたことを示唆している。この技術的能力の出現は、必要に応じて食物(特に肉)を調理する能力などの重要な社会的・適応的利益をもたらし、これによって消化性とエネルギーの利用可能性が高まった。これは、ヒト族の脳の発達に極めて重要であった可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度