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がん:ドライバー変異の減衰が腸の形質転換の全体像を形作る
Nature 649, 8097 doi: 10.1038/s41586-025-09762-w
大腸がんはこれまで、腫瘍抑制遺伝子APCや他のドライバー遺伝子の段階的な変異によって発生し、これらの変異は正の選択を受けたクローンの増殖と結び付いていると考えられてきた。しかし最近の報告では、多くの前がん状態の病変はさまざまな変異型APCタンパク質を発現している複数のクローンからなることが示されている。今回我々は、Krasあるいは他の一般的な大腸がんドライバー遺伝子中の変異を含む、多様な遺伝的背景上のマウスで形質転換を仲介させることにより、マウスの正常な腸上皮には多様なプライミング事象が存在していて、形質転換とクローン選択の全体像を変化させることが可能であり、それが本来ならば負の選択によって失われるはずのApcやCtnnb1での強力なドライバー変異の固定化を可能にすることを明らかにした。これらの知見は、ヒト大腸がんにおいて同様のプライミング事象と一致する変異パターンを我々が実証したことと合わせると、腸上皮でドライバー変異が起こる順序によって、クローンが正の選択と負の選択のどちらを受けるかが決まり、その後の腫瘍発生が形作られる可能性を示唆している。

