Article
生物地球化学:湿潤林の残存する小規模な伐採跡地が熱帯林の生物量の減少を駆動する
Nature 649, 8096 doi: 10.1038/s41586-025-09870-7
熱帯林は全球の森林の地上炭素(AGC)の約半分を貯蔵しているが、広範な地域が、農地の拡大による森林破壊や、火事、選択伐採(択伐)、周縁効果(エッジ効果)による森林劣化などの撹乱の影響を受けている。撹乱を受けた森林は、時間の経過とともに回復し、炭素貯蔵量と生態系機能を徐々に取り戻すことができる。しかし、回復の速度が撹乱のサイズや種類、場所によってどのように異なるかは、いまだ十分には定量化されていない。今回我々は、空間明示的な植生回復曲線を用いる簿記の手法を使用して、撹乱を受けた熱帯林の1990~2020年のAGC動態を定量化した。その結果、撹乱を受けた熱帯乾燥林の炭素収支はほぼ中立的だったのに対し、撹乱を受けた熱帯湿潤林ではAGCを正味で15.6 ± 3.7 PgC失っており、これは主に小規模だが残存する森林伐採跡地によって駆動されていることが分かった。こうした小規模(2 ha未満)の森林破壊事象は、撹乱を受けた面積全体の約5%に影響を与えたに過ぎないが、森林の再成長を伴わない持続的な土地利用転換に起因して、炭素損失全体の約56%を引き起こしていた。これに対し、火事に誘発される大規模な炭素損失は、火事後の長期的な回復によって相殺されていた。森林破壊は、時間の経過とともに炭素貯蔵量の密な湿潤林へと拡大し、単位面積当たりのAGC損失を増大させていた。これらの知見は、小規模な伐採跡地が熱帯の炭素損失に与える不釣り合いに大きな影響を浮き彫りにしており、土地利用変化を抑制し、若齢林や回復中の森林を保護することの必要性を示唆している。

