Article

がん:肺がんでFSP1を標的にしてフェロトーシスを引き起こす

Nature 649, 8096 doi: 10.1038/s41586-025-09710-8

細胞死の一種で、脂質の過酸化を制御できなくなると起こるフェロトーシスに、がん細胞が感受性であることを示す証拠は次々と見つかっている。フェロトーシスを新しい抗がん戦略として活用することは幅広く期待されているにもかかわらず、フェロトーシスが腫瘍の発生を妨げるのかどうか、またこれが治療に活用できるのかどうかはまだ分かっていない。今回我々は、遺伝子改変により作出した肺腺がんのマウスモデルを用い、2つの重要なフェロトーシス抑制因子であるGPX4とFSP1(ferroptosis suppressor protein 1)について腫瘍特異的な機能喪失研究を行い、脂質の過酸化が増加して腫瘍発生が強固に抑制されることを観察した。これは、肺腫瘍が高度にフェロトーシス感受性であることを示唆している。さらに我々は、複数の前臨床モデルにわたって、in vivoでフェロトーシスを防ぐにはFSP1が必要だが、in vitroでは必要でないことを見いだし、生理的条件下では脂質の過酸化を抑制する必要性が高いことを明らかにした。リピドミクス解析によって、Fsp1ノックアウト腫瘍では脂質過酸化物が蓄積していること、また遺伝学的手法や食餌あるいは薬理学的手法によりフェロトーシスを阻害すると、in vivoでのFsp1ノックアウト腫瘍の増殖が効率良く回復することが明らかになった。GPX4とは異なり、FSP1(別名AIFM2)の発現は肺腺がん患者での病勢進行や生存率の低さを示す予兆になることから、これを治療標的に使える可能性がはっきりした。この目標に向けてFSP1を薬理学的に阻害したところ、肺がん前臨床モデルで重要な治療効果が見られることが実証された。我々の研究はin vivoでのフェロトーシス抑制の重要性を明らかにしており、FSP1の阻害を肺がん患者の治療戦略として活用する道筋が見えてきた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度