がん治療:NSD2阻害剤はクロマチンを再配線することで肺がんと膵臓がんを治療する
Nature 649, 8095 doi: 10.1038/s41586-025-09299-y
NSD2はエピジェネティックな修飾であるH3K36me2を触媒し、さまざまな悪性腫瘍の発がん性シグナル伝達の下流で収束するエフェクターの候補である。しかし、NSD2の酵素活性が治療標的となり得るかどうかはまだ分かっていない。今回我々は、臨床グレードの一連の小分子触媒型NSD2阻害剤(NSD2i)の特性を解析し、KRAS駆動型の前臨床がんモデルでは、NSD2の薬理学的標的化が幅広い治療効果を伴うエピジェネティック依存性の構成要素であることを示す。NSD2iは、半数阻害濃度が1桁ナノモルレベルという効力でNSD2を阻害し、近縁のメチルトランスフェラーゼに対する場合よりも高い選択性を示した。構造解析によって、NSD2iのNSD2に対する特異性が、S-アデノシルメチオニンとの競合的結合と二成分チャネルの妨害機構を介した触媒破壊によることが明らかになった。膵臓がんモデルと肺がんモデルでのプロテオエピゲノム戦略と単一細胞戦略は、NSD2iの持続的な曝露がH3K36me2駆動型の異常なクロマチン可塑性を反転させ、H3K27me3を引き継いだ座位でサイレンシングを再確立することで、発がん性遺伝子発現プログラムを抑制する機構を支持している。これに整合して、NSD2iは、膵臓がん細胞と肺がん細胞の生存能力および患者由来異種移植腫瘍の増殖を障害した。さらに、in vivoで忍容性良好なNSD2iは、進行した段階のKRASG12C駆動型膵臓腫瘍・肺腫瘍の自然発生マウスモデルで、ソトラシブによるKRAS阻害と同程度に生存期間を延長した。これらのモデルでは、NSD2阻害剤とソトラシブの併用が相乗的に働き、腫瘍の広範囲にわたる退縮と除去を伴う持続的な生存をもたらした。まとめると我々の研究は、NSD2–H3K36me2軸の標的化が治療の難しいがんにおいて治療標的となり得る脆弱性であることを明らかにしており、臨床条件下でNSD2阻害剤とKRAS阻害剤の併用療法の評価を行うことを支持するものである。

