がん:抗プロゲスチン療法は乳がんリスクの特徴を標的とする
Nature 648, 8094 doi: 10.1038/s41586-025-09684-7
乳がんは、世界中で女性のがん関連死の主な原因となっている。今回我々は、乳がんの抗プロゲスチン予防療法研究1(Breast Cancer-Anti-Progestin Prevention Study 1〔BC-APPS1〕:NCT02408770)において、ウリプリスタル酢酸エステルのプロゲステロン受容体に対する拮抗作用を12週間にわたって継続することによって乳がんリスクの代替マーカーが減少するかどうかを、閉経前の女性24人を対象に評価した。分子レベルの特徴を読み取るために、臨床画像化法と組織の微視的な力学的特性との対応付けとともに、多層的オミクス解析および生細胞解析手法を用いた。その結果、ウリプリスタル酢酸エステルは上皮の増殖(Ki67)を抑制し、アグレッシブな乳がんの起源細胞と想定される乳管内腔細胞前駆体の比率、増殖、コロニー形成能を低下させた。MRIスキャンによって、治療による繊維腺組織体積の減少が明らかになった。その一方で、単一細胞RNA塩基配列解読、プロテオミクス解析、組織学的解析、原子間力顕微鏡観察によって、細胞外マトリックスのリモデリングとコラーゲン配列の秩序性の減少および組織剛性の低下が明らかになった。ウリプリスタル酢酸エステル投与後に最も顕著に発現量が低下したタンパク質はコラーゲンVIだった。コラーゲンVIとSOX9high乳管内腔細胞前駆体が占める位置との間に予想外の空間的関連性があることが判明し、コラーゲンの組織化と乳管内腔細胞前駆体の活性との間につながりがあることが確実になった。剛性の高い環境中で初代ヒト乳腺上皮細胞を培養すると、乳管内腔細胞前駆体の活性が上昇したが、抗プロゲスチン療法がこれに拮抗することから、この機構的な結び付きが裏付けられた。この研究は、生物学的な情報に基づいたがんの予防治療の初期臨床試験のひな型となるものであり、間質のリモデリングと乳管内腔細胞の抑制を介したプロゲステロン受容体のアンタゴニストによる閉経前の乳がん予防の可能性を実証している。

