神経科学:合成α-シヌクレイン繊維はマウスで複製されてMSA様病変を引き起こす
Nature 648, 8093 doi: 10.1038/s41586-025-09698-1
多系統萎縮症(MSA)は原因が不明の急速進行性の神経変性疾患であり、典型的には50~60歳代で発症し、10年以内に死に至る。MSAは繊維状のα-シヌクレイン(aSyn)からなるグリア細胞質内封入体(GCI)を特徴とし、その形成はプリオンの伝播と類似している。MSA患者の脳から抽出した繊維の構造的特徴は明らかにされているが、それらがタンパク質単独で自己複製し得るかどうかは疑問視されており、さらに、in vivoでGCIを誘導し得るかどうかはまだ調べられていない。対照的に、組換えヒトaSynで構築された合成aSyn繊維株1Bは、in vitroで自己複製し、マウスでGCIを誘導することから、MSAとの直接的な関連が示唆されるが、原子スケールでの解析は行われていない。今回我々は、1B繊維および1Bを注入してGCIを発症した罹患マウスから抽出した繊維(1BP)の高分解能の構造解析について報告する。我々はin vivoにおいて、コンホメーションの鋳型によって繊維株の複製が可能になり、その結果、MSA様の封入体病変が引き起こされることを示す。注目すべきことに、1Bと1BPの構造は非常に類似しており、MSA患者から単離した繊維の原繊維の1つで観察されたaSynの折りたたみを模倣していた。さらに、1BPを含んだマウス脳の粗ホモジェネートを新たなマウスに再注入すると、合成の親シード1Bによって誘導されるものと同様のMSA様病変が再現された。我々の知見は、1Bがin vivoで自己複製可能な合成病原体であることを特定するとともに、MSA病変の原因である可能性のある1Bと1BPの構造的特徴を明らかにしており、これらによって治療戦略へ向けた手掛かりがもたらされる。

