生物工学:プライム編集で導入した疾患非依存的なゲノム編集のためのサプレッサーtRNA
Nature 648, 8092 doi: 10.1038/s41586-025-09732-2
塩基編集やプライム編集のように精密ゲノム編集技術は、ほとんどの病原性遺伝子変異を修正できるが、個々の変異に対して新しい治療用製剤を開発する必要があり、それが幅広い臨床応用の妨げとなっている。未成熟終止コドンによって生じる疾患に対しては、サプレッサーtRNA(sup-tRNA)がより一般性のある治療戦略となる。しかし、sup-tRNAを治療に用いる既存の方法は、生涯にわたる投与が必要だったり、効力が弱いために毒性があるかもしれない過剰発現が必要だったりする。今回我々は、PERT(prime editing-mediated readthrough of premature termination codon)という、プライム編集を用いて不必要な内在性tRNAを最適化されたsup-tRNAへと恒久的に転換することによって、疾患に依存しない様式でナンセンス変異を救済する戦略を紹介する。まず、ヒトの418種類全てのtRNAついて、数千種類のバリアントを繰り返しスクリーニングし、sup-tRNAとして最も有望なtRNAを特定した。改変sup-tRNAを過剰発現することなく単一のゲノム座位に導入できるようプライム編集因子を最適化したところ、バッテン病、テイ・サックス病、嚢胞性繊維症のヒト細胞モデルにおいて、効率良く未成熟終止コドンが読み飛ばされ、タンパク質が救済されることが観察された。ハーラー症候群のモデルでは、内在性のマウスtRNAをsup-tRNAに変換する単一のプライムエディターをin vivo送達することで、疾患の症状が広く改善された。PERTは、天然の終止コドンの検出される読み過ごし(リードスルー)を誘導したり、トランスクリプトームやプロテオームに有意な変化を引き起こしたりしなかった。これらの知見は、わずか1種類の治療用物質しか必要とせずに多様な遺伝病を治療できる、疾患に依存しない治療目的のゲノム編集手法の可能性を示唆している。

