遺伝学:精子の塩基配列解読で明らかになった男性の生殖細胞系列における広範な正の選択
Nature 647, 8089 doi: 10.1038/s41586-025-09448-3
精子や卵の細胞系譜に生じた変異は子に伝達され得る。ヒトでは、精子形成過程でドライバー変異が正の選択を受けることで、特定の発達障害の出生有病率を高める可能性がある。最近まで、精子でのこの選択の程度の特徴を明らかにすることは、塩基配列解読技術のエラー率によって制限されてきた。今回我々は、二本鎖塩基配列解読法であるNanoSeqを用いて、24~75歳の男性から得た81点のバルク精子試料の塩基配列解読を行った。我々の知見から、一倍体ゲノム当たり年間1.67(95%信頼区間1.41~1.92)の変異が線形に蓄積すること、そして、これはヒトの老化と関連付けられる2つの変異シグネチャーによって駆動されることが明らかになった。精子試料に対する高深度の標的化NanoSeqおよびエキソームNanoSeqによって、3万5000以上の生殖細胞系列コード変異が明らかになった。男性の生殖細胞系列において、大きな正の選択を受けている40の遺伝子(31遺伝子は新たに特定)が検出された。これらの遺伝子は活性化あるいは機能喪失の機構を持ち、さまざまな細胞経路に関与している。こうした正の選択を受けた遺伝子のうち、大半は小児における発達障害やがん易罹患性症候群と関連付けられる一方、4つの遺伝子は健康な集団においてタンパク質短縮型バリアントの頻度が高まっていた。我々は、精子形成過程での正の選択が、疾患を引き起こす既知の変異のリスクを2~3倍増加させ、その結果、中年期以降の男性の精子の3~5%がエキソーム全体にわたって病原性変異を持つようになることを示す。これらの知見は、生殖細胞系列での選択動態を明らかにするとともに、高齢期の父親の子の疾患リスクの上昇は、これまで考えられていたよりも広範に及ぶことを浮き彫りにしている。

