神経科学:脳の発生・発達と神経炎症の空間動態
Nature 647, 8088 doi: 10.1038/s41586-025-09663-y
発生・発達の全時点にわたって多層的なオミクス情報を空間的にマッピングできれば、脳の発生、分化、領域化、および疾患関連変化を駆動する機構を調べることが可能になる。本研究で我々は、マルチプレックス免疫蛍光画像化(CODEX:co-detection by indexing)と並行して、空間ARP-seq(ATAC–RNA–protein sequencing)と空間CTRP-seq(CUT&Tag–RNA–protein sequencing)を含む空間トリオミクス(tri-omics)塩基配列解読を使って、脳の発生・発達や神経炎症の際の動的空間リモデリングをマッピングした。我々は、生後0日(P0)からP21までのマウス脳の時空間トリオミクスアトラスを作成し、ヒトの発生・発達中の脳と対応する領域を比較した。皮質では、層を決定する転写因子サブセットに対するクロマチンアクセシビリティーの時間的な持続性と空間的な広がりが明らかになった。脳梁では、亜領域全体でミエリン遺伝子群の動的なクロマチンプライミングが観察され、層特異的な投射ニューロンに軸索発生とミエリン形成を連係させる役割があることが分かった。我々は、リゾレシチンによる神経炎症マウスモデルにおいて、発生過程と共通した分子プログラムを発見した。ミクログリアは、炎症と寛解に関して保存されたプログラムと独特なプログラムの両方を示し、一過性の活性化は病変中心部のみならず、遠位部でも観察された。まとめると本研究は、脳の発生・発達と神経炎症の根本にある共通の機構および異なる機構を明らかにし、脳の発生・発達、機能および疾患を研究するための豊富な研究資源を提供している。

