神経科学:マウス視覚皮質の発生・発達における細胞タイプの連続的な多様化
Nature 647, 8088 doi: 10.1038/s41586-025-09644-1
哺乳類の皮質は、一連の多様な細胞タイプから構成されており、時間的に調節された連続的事象を通して発達する。単一細胞トランスクリプトミクスにより、皮質発達の全時間経過にわたる各細胞タイプの体系的な研究が可能になった。本論文で我々は、発生・発達中のマウス視覚皮質の、網羅的で高解像度のトランスクリプトーム・エピゲノム細胞タイプアトラスを提示する。このアトラスは、56万8654個の細胞の高品質な単一細胞トランスクリプトームの単一細胞RNA塩基配列解読データセットと、20万61個の高品質な細胞核の単一核マルチオームデータセットから構築されたもので、これらのデータは胚期から出生後までの各発生・発達段階(胚齢11.5日目~生後日齢56日目)にわたり密にサンプリングされている。我々は、視覚皮質の全ての興奮性、抑制性、非ニューロンの細胞タイプについて、トランスクリプトームの発生・発達軌跡マップを計算的に再構築した。これにより、特定の発生・発達時期での新たな細胞タイプの出現を示す分岐点や、細胞の多様化の分子的特徴が特定された。この軌跡マップは、胚期におけるニューロン発生とグリア発生、有糸分裂後の早期成熟によって、全ての細胞クラスとほぼ全てのサブクラスが、時間的にずれた平行様式で生じることを示している。より精細な細胞タイプは出生後の分化過程を通して生じていて、これには開眼段階や臨界期の開始時点における多くの細胞タイプの遅い出現が含まれ、これは、皮質発達のさまざまな段階で細胞タイプの多様化が連続して起きていることを示唆している。発生・発達期間を通して、特定の細胞タイプでは遺伝子の発現やクロマチンアクセシビリティーに協調的な動的変化が見られた。また、接近可能なクロマチンモチーフを介して転写因子を下流の標的遺伝子と結び付ける、細胞タイプ特異的で時間的に分解された遺伝子調節ネットワークが明らかになった。まとめると本研究は、個々の細胞タイプと特定の時間的事象を直接関連付ける詳細な動的分子マップを提供しており、これによって、皮質の細胞タイプと回路の複雑で多面的な発生・発達の根底にある分子的論理を明らかにすることができる。

