がん:起源である基底細胞が、がんでの神経内分泌–タフト細胞系譜の可塑性を決定付ける
Nature 647, 8088 doi: 10.1038/s41586-025-09503-z
神経内分泌細胞とタフト細胞は、まれな化学感覚上皮細胞系譜の細胞で、前者は転写因子ASCL1、後者はPOU2F3の発現が特徴である。小細胞肺がん(SCLC)を含めた神経内分泌がんでは、タフト様細胞サブセットがしばしば見られ、この特徴は患者の予後不良と関連している。しかし、神経内分泌–タフト細胞腫瘍の不均一性を引き起こす仕組みやタフト様がんの起源はこれまで知られていない。今回我々は、遺伝子操作した複数のSCLC動物モデルを用いて、(これまで考えられていたように神経内分泌細胞が起源ではなく)起源の基底細胞からヒトSCLCの特性を高度に再現する神経内分泌–タフト様腫瘍が生じることを明らかにした。さらに、基底細胞由来のSCLCの単一細胞クローン解析を行ったところ、Atoh1+状態などの予想外の転写状態が明らかになり、また神経内分泌–タフト系譜の可塑性の基盤となる細胞系譜の軌跡が判明した。基底細胞だけで見られることだが、高MYC、PTEN喪失、ASCL1抑制などのヒトのタフト様SCLCに多く見られる遺伝的変異を導入すると、これらが協調してタフト様腫瘍の発生を促進した。944例のヒトSCLCのトランスクリプトーム解析によって、基底細胞様サブセットとタフト細胞–イオノサイト様の状態が明らかになり、がん状態と基底細胞の正常な損傷応答機構の間に顕著な保存が認められることが全体として実証された。総合するとこれらのデータは、SCLCをはじめとする神経内分泌–タフト系譜のがんの起源がおそらく基底細胞であることを示唆しており、これによって神経内分泌–タフト腫瘍の不均一性が説明でき、系譜可塑性を標的とすることについて新たな手掛かりが得られた。

