神経科学:全皮質のin situ塩基配列解読で明らかになった入力依存性領域のアイデンティティー
Nature 647, 8088 doi: 10.1038/s41586-024-07221-6
大脳皮質は、多様な遺伝子発現を持つニューロンタイプから構成されていて、これらのニューロンタイプは組織化されて特殊化した皮質領域を形成している。これらの領域は、それぞれが特徴的な細胞構造、接続性、ニューロン活性を持ち、互いに配線されてモジュール式のネットワークを構築している。しかし、これらの空間構成がニューロンのトランスクリプトーム的な特徴に反映されているかどうか、また、そうした特徴が発達過程でどのように確立されるかについては明らかになっていない。今回我々は、ハイスループットのin situ塩基配列解読法であるBARseqを用いて、9つのマウス前脳半球にわたる419万4658個の皮質ニューロンを含む1030万個の細胞で、104の細胞タイプマーカー遺伝子の発現を細胞レベルの分解能で調べた。単一ニューロンにおける遺伝子発現のde novoクラスタリングから、以前の単一細胞RNA塩基配列解読研究の結果と一致するトランスクリプトームタイプが明らかになった。トランスクリプトームタイプの組成は、皮質領域のアイデンティティーを高度に予測した。さらに、トランスクリプトームタイプの組成が類似した領域(我々はこれを皮質モジュールと定義する)は、接続性の高い領域と重なっていることから、同一のモジュール構成がトランスクリプトームの特徴と接続性の両方に反映されていることが示唆された。皮質ニューロンのトランスクリプトームプロファイルがどのように発達に依存するかを調べるため、我々は、新生仔の両眼摘出後に細胞タイプの分布を評価した。その結果、両眼摘出によって、視覚領域の細胞タイプの組成プロファイルが同一モジュール内の隣接する皮質領域へと移行したことから、末梢入力が皮質モジュール内の領域の異なるトランスクリプトームアイデンティティーを明確にすると示唆された。ハイスループットで低コストかつ再現性のあるBARseqによって可能になった我々の研究は、大規模なin situ塩基配列解読を用いた脳規模の分子構造の解明とその発達の理解の両方の原理証明を示している。

