生物地球化学:オーストラリアの熱帯林の地上部バイオマスは現在正味の炭素ソースである
Nature 646, 8085 doi: 10.1038/s41586-025-09497-8
熱帯林は重要な全球の炭素シンクとして働き、地球システムモデルは、大気中の二酸化炭素濃度の増大は高木の成長を刺激するので、こうした森林の近い将来の炭素シンクの能力が増大すると予測している。しかし、最新の森林インベントリーの解析結果は、手付かずの熱帯林の炭素シンクの能力が低下している可能性があり、将来炭素シンクから炭素ソースへと転じる可能性の前兆であることを示唆している。今回我々は、オーストラリアの湿潤熱帯林から得られた長期の森林インベントリーデータ(1971〜2019年)と因果推論の枠組みを用いて、立木の地上部木質バイオマスの経時的な炭素収支と、それを説明する個体群動態過程、サイクロンを含む気候の駆動要因を評価した。その結果、こうした森林の地上部木質バイオマスでは既に、炭素シンク(0.62 ± 0.04 Mg C ha−1 yr−1:1971〜2000年)から炭素ソース(−0.93 ± 0.11 Mg C ha−1 yr−1:2010〜2019年)への移行が起きており、シンクの能力は0.041 ± 0.032 Mg C ha−1 yr−1の速さで低下していることが見いだされた。この移行は、ますます極端になる温度などの気候異常によって駆動されており、高木の枯死率とそれに関連するバイオマスの損失を増加させていて、高木の成長という炭素の肥沃化(刺激)の証拠はなかった。また、炭素シンクの能力の根底にある森林の活動は、サイクロンによっても中断され、これは長期的な気候によって生じる変化と同程度の影響を及ぼしている。我々の知見は、全球の湿潤熱帯林の大半で木質地上部バイオマスが気候変動に対して同様に応答する可能性を示唆しており、これは炭素シンクから炭素ソースへの長期的な転換に至る可能性がある。

