がん治療:G1–Sチェックポイントが機能しないがんをサイクリンA/B RxL阻害剤により標的とする
Nature 646, 8085 doi: 10.1038/s41586-025-09433-w
小細胞肺がん(SCLC)には、RB1とTP53の機能喪失変異がほぼ例外なく存在し、細胞周期のG1–Sチェックポイントが機能しなくなっていて、これがE2F活性の調節異常に結び付く。他のがんでも同様に、CDKN2Aの喪失や、サイクリンDもしくはサイクリンEの増幅によってG1–Sチェックポイントが破壊され、E2Fの過剰な活性化が引き起こされる。細胞周期の進行にはE2Fの活性化が不可欠だが、過剰な活性化はアポトーシスを促進して、治療脆弱性をもたらす。サイクリンタンパク質は保存された疎水性の小領域を介して、短い線状のRxLモチーフを持つ基質に結合する。サイクリンAは、RxL依存性結合によりE2Fを抑制するが、この結合が破壊されるとE2Fが過剰に活性化される。しかし、この基質との接触面を標的にするのは、これまでのところ難しかった。今回我々は、細胞透過性を持ち、経口的にバイオアベイラブルな大環状ペプチドである、サイクリンと基質のRxLを介した結合を妨げる阻害剤を開発した。サイクリンAおよびサイクリンBのRxLモチーフの両方に作用する阻害剤(サイクリンA/Bi)は、SCLC細胞やE2F活性が高いその他のがん細胞を選択的に死滅させた。遺伝学的スクリーニングにより、サイクリンA/Biは、サイクリンBとCDK2に依存する紡錘体形成チェックポイントの活性化を介してアポトーシスを誘発することが明らかになった。作用機序としては、サイクリンA/BiはサイクリンA–E2Fの相互作用とサイクリンB–MYT1 RxLの相互作用を遮断することにより、E2FとサイクリンBを過剰に活性化する。特にサイクリンA/Biは、新形態のサイクリンB–CDK2複合体の形成を促進し、この複合体が紡錘体形成チェックポイントを活性化して、有糸分裂細胞死を誘発する。さらに、経口投与したサイクリンA/Biは、化学療法抵抗性のSCLC患者由来の異種移植片において、ロバストな抗腫瘍活性を示した。これらの知見は、サイクリンA/Biが機能獲得機構を介してアポトーシスの引き金となることを明らかにしており、E2Fが駆動するがんの治療薬としてのサイクリンA/Bi開発を支持するものだ。

