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分子工学:合成生理学により、コカインのケモジェネティクスで薬物探索行動を鈍らせる

Nature 646, 8085 doi: 10.1038/s41586-025-09427-8

化学的フィードバックは生理学では広く見られるが、基本的な機能を摂動することなく研究するのは難しい。その一例が嗜癖性薬物で、これらは脳に作用してドーパミンシグナル伝達を亢進させることにより、薬物探索行動や薬物摂取の正のフィードバックサイクルを生じさせる。しかし、基盤となるドーパミンを変化させてこの過程に干渉すると、学習や運動、注意力、覚醒状態などに悪影響が出てしまう。今回我々は、生理学的制御系から着想を得て、嗜癖の正のフィードバックサイクルを妨げる、高度に選択的な合成生理学手法を開発した。この方法は、身体–脳のシグナル伝達ループに、コカインに依存した逆方向のシグナル伝達過程を組み込むというもので、我々はまずタンパク質工学的手法を用いて、他の薬物や内在性分子よりもコカインに高い選択性を示すコカイン依存性イオンチャネルを作製した。ラットの、本来ならコカインで阻害される外側手綱核で興奮性コカイン依存性チャネルを発現させると、食欲には影響することなくコカインの自己投与行動が抑制された。コカインで活性化されるこの人為的なケモジェネティック過程は、コカインで誘発された側座核での細胞外ドーパミンの上昇を抑制した。これらの結果から、コカインのケモジェネティクスが、コカイン存在下でドーパミンの放出を止めることにより、薬物作用の強化に対抗する選択的な手法になることが明らかになった。将来的には、他の嗜癖性薬物やホルモン、代謝物についてもケモジェネティクスによる受容体の制御が可能になり、これらの物質が関わる神経回路機構の合成生理学手法を用いた研究が促進されるだろう。これらのケモジェネティクスによる受容体は、天然の報酬よりもコカインに対して高度な特異性を示すため、コカイン嗜癖の遺伝子治療にも道が開ける可能性がある。

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