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神経変性:リチウム欠乏とアルツハイマー病の発症
Nature 645, 8081 doi: 10.1038/s41586-025-09335-x
アルツハイマー病(AD)で最も早期に生じる分子変化が何かは、よく分かっていない。今回我々は、脳内の内在性リチウム(Li)が動的に調節されており、老化における認知機能の保持に寄与していることを示す。複数の金属を分析した中でLiだけが、ADの前駆症状である軽度認知障害(MCI)患者の脳で顕著に減少していた。ADでは、アミロイド隔離によってLiのバイオアベイラビリティーがさらに低下していた。我々は、野生型マウスモデルとADマウスモデルを用い、食餌からLiを除去することによって、内在性Liが脳で果たす役割を調べた。皮質の内在性Liを約50%減少させると、アミロイドβの沈着とリン酸化タウの蓄積が顕著に増加して、炎症性ミクログリアの活性化、シナプス・軸索・ミエリンの喪失につながり、認知機能低下が加速した。これらの影響には、少なくとも部分的には、キナーゼGSK3βの活性化が関係していた。単一核RNA-seq解析によって、Liの欠乏が脳のさまざまな細胞タイプでトランスクリプトームの変化を引き起こし、こうした変化はADに見られるトランスクリプトーム変化と重なり合っていることが明らかになった。アミロイド結合力が低いLi塩であるオロト酸リチウムによる補充療法では、ADマウスモデルと老化した野生型マウスの病理学的変化と記憶障害を防ぐことができた。これらの知見から、脳の内在性Liの生理作用が明らかになり、Liの恒常性の破綻が、AD発病の初期事象である可能性が示唆される。アミロイドと結合しにくい塩によるLiの補充は、ADの予防・治療の有望な手法となる可能性がある。

