古生物学:有顎脊椎動物の姉妹群における頭部–胴部境界の新規な構成
Nature 645, 8081 doi: 10.1038/s41586-025-09329-9
有顎脊椎動物の起源に関する標準的なシナリオは、複雑な感覚系、血流量の多い心臓、開口筋と頭胸部蝶番の統合といった一連の解剖学的な新機軸によって促進された、底生性のグレーザーから遊泳性の捕食者への移行として描かれる。しかし、有顎脊椎動物の姉妹群である骨甲類で復元されたヤツメウナギ様の解剖学的内部構造には、これらの顎口類的形質がないように思われ、系統的な近さにもかかわらず形態的に隔たりがあると示唆されている。本研究で我々は、骨甲類のモデル生物であるノルセラスピス(Norselaspis glacialis)に対してシンクロトロンX線マイクロCTを用い、この無顎魚類では、独自に骨化した頭部–胴部境界にまたがって顎口類的派生形質が見られることを示す。ノルセラスピスの内耳は、感覚器官の発達(pars inferiorとsinus superiorの拡大)が顎の起源よりはるか前に獲得されたことを示している。クラウン群顎口類で見られるように、対になった静脈排出路が、心臓につながる大容量の血管に血液を導いている。また、胴部最前部の神経の1本の神経幹が胸鰭まで延びているという、我々の知る限り他の脊椎動物ではまだ見つかっていない特徴も確認された。この点で、今回の再構成結果は、顎口類の肩が鰓器官から進化したとする仮説に疑問を投げ掛けている。我々の観察結果は、ノルセラスピスが、初期の顎器官の動力源となった筋肉質の首と喉の挿入の先駆け的存在であることを明らかにしている。従って、「顎口類的な」新機軸をもたらした機能的駆動力と考えられることの多い脊椎動物の顎は、実際には感覚の強化、心拍出量の増加、運動器官制御の増強に続いて進化したことになる。

