Article
心血管生物学:プロピオン酸イミダゾールはアテローム性動脈硬化の促進因子であり、治療標的である
Nature 645, 8079 doi: 10.1038/s41586-025-09263-w
アテローム性動脈硬化は心血管疾患の主たる根本原因であり、その予防の基本は従来型の心血管リスク因子を見つけて治療することである。しかし、初期の血管疾患のリスクは、気付かれないままのことが多い。最近の研究で、アテローム性動脈硬化の病態生理に関わる新しい分子が複数見つかり、早期診断と治療効果を改善するための、従来のものに代わる疾患バイオマーカーと治療標的の必要性が強調されている。今回我々は、マウスおよび2つの独立したヒトコホートにおいて、微生物が産生するプロピオン酸イミダゾール(ImP)がアテローム性動脈硬化の程度と関連していることを観察した。さらに、穀物原料飼料を与えて飼育したアテローム性動脈硬化易発性マウスにImPを投与したところ、脂質プロファイルを変えなくてもアテローム性動脈硬化の誘発には十分であり、自然免疫と獲得免疫が全身性、局所性の両方で活性化され、炎症につながった。具体的には、骨髄系細胞ではImPがイミダゾリン-1受容体(I1R、別名ニスカリン)を介してアテローム性動脈硬化を引き起こすことが分かった。マウスでこのImP–I1R軸を遮断すると、ImPもしくは高コレステロール食によるアテローム性動脈硬化の発症が妨げられた。ImPと進行中のアテローム性動脈硬化との強い関連と症状の進行へのImP–I1R軸の寄与が突き止められたことで、アテローム性動脈硬化の早期診断と個別化治療の改善に新たな道が開かれた。

