作物防御:植物におけるフェニルアラニンからサリチル酸の完全な生合成
Nature 645, 8079 doi: 10.1038/s41586-025-09175-9
サリチル酸(SA)は、生物ストレスや非生物ストレスに対する植物応答に関わる重要な植物ホルモンである。植物はSAを産生する経路として、イソコリスミ酸シンターゼ経路とフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)経路の2つを進化させてきた。イソコリスミ酸シンターゼ経路は完全に明らかにされているが、PAL経路はまだ不完全である。本論文で我々は、イネ(Oryza sativa)のSA-DEFICIENT GENE 1(OSD1)からOSD4の機能解析を通して、SA生合成に関するPAL経路の全貌を決定したことを報告する。シンナモイル-補酵素A(CoA)リガーゼであるOSD1は、トランス型ケイ皮酸からシンナモイルCoAへの変換を触媒し、シンナモイルCoAは続いてペルオキシソームでのβ酸化経路を介してベンゾイルCoAへ変換される。こうして生じたベンゾイルCoAは、ペルオキシソームのベンゾイルトランスフェラーゼOSD2によって、さらに安息香酸ベンジルへ変換される。その後、安息香酸ベンジルは、小胞体膜に局在するシトクロムP450であるOSD3によってヒドロキシ化されてサリチル酸ベンジルとなり、最終的に細胞質のカルボキシルエステラーゼOSD4によって加水分解されてサリチル酸になる。進化的な解析では、PAL経路は裸子植物の分岐以前に初めて構築され、ほとんどの種子植物で保存されてきたことが明らかとなった。イネにおけるPAL経路の活性化は、サリチル酸レベルと植物免疫を有意に増強する。PAL経路が完全に明らかになったことで、植物種全体の主要なサリチル酸生合成経路に重要な知見がもたらされ、作物の免疫を調節するための明確な標的が示された。

