触媒:金属触媒を用いた不斉水素原子移動のためのヘムタンパク質のリパーパシング
Nature 644, 8076 doi: 10.1038/s41586-025-09308-0
遷移金属–ヒドリドは、カルボニル、アルケン、アルキンなどの不飽和部分をヒドロ官能基化する触媒反応において広く利用されている。不均一な金属–ヒドリド結合開裂を補完するために、金属–ヒドリド水素原子移動(MHAT)が、非活性化(活性化されていない)アルケンをラジカルヒドロ官能基化して複雑分子の後期多様化を可能にする有望な戦略として、最近注目を集めている。しかし、プロキラルな有機ラジカルとエナンチオピュアな触媒の相互作用が弱いため、不斉MHATは依然として困難である。今回我々は、シトクロムP450酵素(CYP)が、自然界に見られない反応である不斉MHATを触媒するのに、リパーパス(別の目的に転用)できることを示す。P450BM3の指向性進化によって、非活性化アルケンのMHATラジカル環化を触媒する三重変異体が得られ、ピロリジンやピペリジンを含むさまざまな環状化合物が、好気性全細胞条件において最高で98:2の鏡像異性体比で生成した。電子不足のアルケンを除き、ヒドラゾン、オキシム、ニトリルなどの代替的ラジカル受容体が、リパーパスされたP450BM3によってエナンチオリッチな環状生成物に変換された。機構研究によって、一過性の鉄(III)–ヒドリド種の均一開裂によって進行するMHAT機構が裏付けられた。CYP119から始まり、指向性進化によって立体補完的MHATaseが得られ、これは、MHAT生体触媒反応向けにリパーパスされたCYPの可能性を浮き彫りにしている。今回の研究は、均一な金属–ヒドリドの反応性を金属酵素に組み込むことで不斉ラジカル生体触媒の適用範囲を拡大できる見通しを明らかにしている。

