医学研究:統合的な疾患マッピングを可能にする病理指向型マルチプレックス法
Nature 644, 8076 doi: 10.1038/s41586-025-09225-2
組織内のタンパク質の発現と局在は、健康と疾患の主要な決定要因である。近年の多重イメージング技術の進展により、空間的に捉えられるタンパク質の数は増加しているが、それらの生物学的階層(細胞構造、細胞内ドメイン、シグナル伝達活性)を統合することは依然として困難である。その主な原因は抗体パネルの構成や画像分解能の限界にあり、それらが合わさって画像解析の適用範囲を制限している。今回我々は、スケーラブルで品質管理が可能かつ解釈性の高いフレームワークであるPathoPlex(pathology-oriented multiplexing)を報告する。PathoPlexは、細胞内レベルの高解像度多重イメージングと、タンパク質共発現パターン(クラスター)を複数の生物学的レイヤーにわたって抽出・解釈するためのソフトウェアパッケージを統合したものである。PathoPlexは、95回の反復イメージングサイクルを通じて、1ピクセル当たり80 nmの解像度で、140種類以上の市販抗体のマッピングを最適化しており、40例以上のアーカイブ組織標本の同時処理を可能にする実用的な解決法を提供する。概念実証実験では、上皮のJUN活性が免疫介在性腎疾患での主要スイッチであることが明らかになり、クラスター解析によって関連する病理学的特徴を捉えられることが実証された。さらに、PathoPlexを用いてヒト糖尿病性腎症を解析したところ、このフレームワークによって、患者単位のクラスターと臓器機能障害が結び付けられ、治療標的となり得る疾患形質(カルシウムを介した尿細管ストレス)が明らかになった。また、PathoPlexを用いて、組織学的には腎疾患を認めない2型糖尿病患者において腎ストレス関連クラスターが検出された。加えて、組織ベースの指標を用いて、グルコース共輸送体SGLT2阻害剤に対する応答が評価された。総じて、PathoPlexは、多重イメージングの普及および、複雑な組織における統合的画像解析手段の確立に向けた道を開き、次世代の病理学アトラスの開発を後押しするものである。

