高分子化学:天然ポリエステルからエナンチオピュアなPHAへの立体発散的変換
Nature 643, 8073 doi: 10.1038/s41586-025-09220-7
DNA、タンパク質、セルロース、ポリ[(R)-3-ヒドロキシ酪酸]((R)-P3HB)などの天然のキラル高分子(ポリマー)は、エナンチオピュアな形態でよく見られる。エナンチオピュアなポリマーを合成する既存の方法では、エナンチオ特異的な重合に重点が置かれており、対応するキラルモノマーから特定の1種類のエナンチオマーだけが得られる。今回我々は、細菌が産生する(R)-P3HBを単一のキラル源として用い、エナンチオピュアかつジアイソタクチックなポリ(3-ヒドロキシアルカン酸)(PHA)の全てのジアステレオマーを得る、触媒的立体発散的合成戦略を提示する。(R)-P3HBから、一連のエナンチオピュアな(R,R)-α-アルキル化-β-ブチロラクトンが得られ、次いで、触媒によって制御されたジアステレオ発散的な開環重合(ROP)を経てエナンチオピュアかつジアイソタクチックなα-アルキル化PHAが得られた。金属触媒による配位–挿入ROPによって、キラル保持したトレオ-(R,R)-ジアイソタクチックPHAが得られた一方、有機超高塩基によって触媒されるアニオン性ROPによって、キラル反転したエリトロ-(R,S)-ジアイソタクチックPHAが得られ、1つの位置規則性および立体規則性だけを示す精密なジアイソタクチックPHAが実現した。またこの戦略によって、(R)-P3HBから、α,α-ジアルキル化PHAの4つ全ての立体異性体((R,R)、(S,S)、(R,S)、(S,R))の立体発散的な合成が可能になった。これらの異性体を解重合すると、高い立体選択性でキラルα,α-ジアルキル化-β-ブチロラクトンが得られる。まとめると、触媒によって制御される今回の位置選択的および立体選択的な立体発散的合成方法は、α(α)-(二)置換PHAの16通りのエナンチオピュアな立体異性体の合成を可能にするとともに、ジアイソタクチックPHAの、立体化学によって規定される構造と特性の関係の研究を可能にし、主鎖の立体配置とアルキル側鎖がこれらのPHAの熱的特性、溶融加工性、機械的性能、超分子ステレオコンプレックス化に及ぼす影響に関する知見をもたらす。

