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細胞生物学:「キルスイッチ」マイクロペプチドを用いて凝縮体の微小環境を調べる
Nature 643, 8073 doi: 10.1038/s41586-025-09141-5
生体分子凝縮体は、周囲の核質や細胞質とは異なる物理化学的性質を持つ細胞内微小環境を作ると考えられている。しかし、生きた細胞で特定の凝縮体を選択的に操作するツールが限られているため、凝縮体の微小環境と生物学的機能との関係性を調べるのは難しい課題である。今回我々は、内在性の凝縮体を調べる普遍的な方法として、非天然のマイクロペプチド(キルスイッチと呼ぶ)とナノボディを利用する誘導系を開発し、細胞内の凝縮体の微小環境と機能の直接的な結び付きを実証した。キルスイッチは芳香族アミノ酸の多い疎水性配列で、自己会合能を持ち、ヒトのタンパク質とは全く相同性がない。ヒト細胞内で内在性の疾患特異的凝縮体にキルスイッチを誘導すると、キルスイッチは凝縮体形成タンパク質の動きを止め、予想通りの効果と予想外の効果の両方をもたらした。キルスイッチを核小体タンパク質NPM1へ標的化すると、核小体の組成が変わり、核小体内のリボソームタンパク質の動きが低下した。キルスイッチを融合がんタンパク質の凝縮体へと誘導すると、凝縮体の組成が変化し、凝縮体が駆動する白血病細胞の増殖を阻害した。アデノウイルスの核内凝縮体では、キルスイッチはキャプシドタンパク質の凝縮体への分配を妨げ、ウイルス粒子の構築を抑制した。これらの結果は、細胞の凝縮体内の微小環境が、エフェクタータンパク質の非化学量論的濃縮と可動性に不可欠な関わりを持つことを示唆している。キルスイッチは、内在性凝縮体の物質特性を変化させて、多様な生理過程と病理過程に結び付いた凝縮体の機能を調べるための、幅広く応用可能なツールである。

