Article

グラフェン:菱面体晶グラフェンにおけるカイラル超伝導の特徴

Nature 643, 8072 doi: 10.1038/s41586-025-09169-7

カイラル超伝導体は、時間反転対称性を自発的に破る非従来型の超伝導状態であり、ゼロでない角運動量でのクーパー対形成がその典型的な特徴である。こうした状態には、マヨラナフェルミオンが存在する可能性があり、トポロジカル物理学研究やフォールトトレラントな量子コンピューティングの重要なプラットフォームとなる。いくつかの候補系の集中的な探索と、長期にわたる研究にもかかわらず、カイラル超伝導は現状では見つかっていない。今回我々は、モアレ超格子効果のない菱面体晶の4層および5層グラフェンに、ロバストな非従来型超伝導を発見したことを報告する。5つのデバイスでゲート誘起平坦伝導帯に2つの超伝導状態が観測され、Tcは最高300 mK、電荷密度neは最低2.4 × 1011 cm−2であった。電子の軌道運動に起因する自発的な時間反転対称性の破れ(TRSB)が発見され、いくつかの観測結果からこれらの超伝導状態のカイラル性が示された。これには、(1)超伝導状態において、Rxxが、面外磁場Bの変化に対して磁気ヒステリシスを示し、これは他の全ての超伝導体には見られないものであること、(2)超伝導状態が、面内磁場に対してロバストであり、スピン分極およびバレー分極クオーターメタル(QM)相の範囲で発現すること、そして(3)常伝導状態が、ゼロ磁場での異常なホール信号と磁気ヒステリシスを示すことが含まれる。また、どのグラフェン超伝導よりも高い1.4 Tという臨界Bが観測され、これは、バーディーン–クーパー–シュリーファー(BCS)とボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)のクロスオーバーに近接した強結合超伝導を示している。今回の観測結果は、トポロジカル超伝導の研究に適した純粋な炭素材料を確立するものであり、マヨラナモードとトポロジカル量子コンピューティングの探求に有望である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度