Article
生理学:頸部リンパ管の非侵襲的操作による脳脊髄液排出の増加
Nature 643, 8072 doi: 10.1038/s41586-025-09052-5
脳を取り囲むクモ膜下腔の脳脊髄液(CSF)は、頸部のリンパ節へ排出されるが、その流路と調節についてはこれまで解明が難しかった。今回我々は、Prox1–GFPリンパ管レポーターマウスにおいて、蛍光トレーサーを用い、CSFがリンパ管を介して浅頚リンパ節へ流出する経路をマッピングした。その結果、CSFは頭蓋基部で髄膜内の最初のリンパ管に入り、続いて頭蓋外眼窩周囲、嗅神経、鼻咽頭、硬口蓋のリンパ管を通り、平滑筋に覆われた浅頸リンパ管を通って、下顎リンパ節に至ることが分かった。成体マウスのトレーサー解析では、頸部への全CSF流出の大部分が、浅頸リンパ節に送られた。しかし、老齢マウスでは、鼻粘膜と硬口蓋のリンパ管が少なく、頸部リンパ節へのCSF流出が減少していた。老齢マウスの浅頸リンパ管では、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)をコードするNos3の発現は内皮細胞で増加していたが、eNOSタンパク質の量は減っており、一酸化窒素シグナル伝達が低下していた。老齢マウスで無損傷皮膚を介して圧力調節機械装置で浅頸リンパ管を操作すると、CSF流出が倍増し、排出障害は是正された。この操作は、浅頸リンパ管を圧迫することでCSF流出を増加させたが、リンパ管の正常な自発的収縮にはほとんど影響しなかった。総合すると今回の知見は、CSF流出に対する浅頸リンパ管の重要性と、CSF排出障害を非侵襲的な機械的刺激によって回復できる可能性をはっきりと示している。

