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生化学:FoTO1とTaxol遺伝子の発見によって可能になったバッカチンIIIの生合成

Nature 643, 8071 doi: 10.1038/s41586-025-09090-z

植物は複雑で強力な治療効果を持つ分子を産生するが、そうした分子を天然の生産者から、あるいは化学合成によって得るのは難しく、これが、これらを臨床利用する際の制約となっている。そのよく知られている例が抗がん剤のパクリタキセル(商標名タキソール)で、これはイチイ属(Taxus)の植物から得られる。パクリタキセルの完全な生合成経路が明らかにされれば異種生産が可能になるだろうが、半世紀にわたる研究にもかかわらず、これはまだ実現していない。イチイ属植物の大型で酵素を豊富に含むゲノムでは、従来のようなRNA塩基配列解読と共発現解析を用いても、パクリタキセル合成経路の解明は難しいと我々は考えてきた。そこで今回我々は、合成経路を確認するための転写解析の分解能を改善するために、さまざまな組織、細胞タイプ、発生段階、誘発条件にわたって細胞の状態を転写の面からプロファイリングする戦略を開発し、これをmpXsn(multiplexed perturbation × single nuclei)法と命名した。得られたデータから、パクリタキセル生合成遺伝子は、連続的な副経路を示唆する異なった発現モジュールに分かれていることが分かった。これらのモジュールから7個の新しい遺伝子が決定され、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)の葉で、タキソールの工業生産原料であるバッカチンIIIの17個の遺伝子によるde novo生合成と単離が可能になった。その生合成レベルは、天然のイチイ属植物の針葉中でのものに匹敵する。特に、最初の酸化の際に目的産物の形成を促進するには、NTF2(nuclear transport factor 2)に類似のタンパク質FoTO1が重要な役割を担うことが分かり、パクリタキセル経路再構築の長年の障害となっていた反応が解明された。新しいβ-フェニルアラニン-CoAリガーゼと合わせて、今回発見された8個の遺伝子によって、3′-N-デベンゾイル-2′-デオキシパクリタキセルのde novo生合成が可能になる。さらに一般化すると、我々は、詳しく解明されていない大型ゲノムの複雑さに適応するように共発現解析の威力を効率良く高めた、価値ある遺伝子セットの発見を促進する一般的な方法を確立したと言える。

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