Article

分子磁石:最高100 Kにおけるジスプロシウムアミド–アルケン錯体の軟磁性ヒステリシス

Nature 643, 8070 doi: 10.1038/s41586-025-09138-0

ランタノイドは、原子レベルでも分子レベルでも磁気記憶を示す。ランタノイド単分子磁石の残留磁気温度はd遷移金属の例を上回ることがあり、2017年以降、1237(28) cm−1から1631(25) cm−1の磁化反転エネルギー障壁(Ueff)と、40~80 Kにおける磁気ヒステリシスループの開きが、典型的にはアキシャル型のジスプロシウム(III)ビス(シクロペンタジエニル)錯体を用いて実現されている。直線状のジスプロシウム(III)化合物はより大きなmJzとラベル表示された量子化軸への全角運動量Jの射影)状態分裂をもたらし得るため、より高いUeffとヒステリシス温度をもたらすと予測されているが、ランタノイド結合は主にイオン性なので、これまでのジスプロシウムビス(アミド)錯体は、高速磁化反転を促す高度に屈曲した形状を示していた。今回我々は、Ueff = 1843(11) cm−1と最高100 Kでゆっくり閉じる軟磁性ヒステリシスループを示す、ジスプロシウムビス(アミド)–アルケン錯体[Dy{N(SiiPr3)[Si(iPr)2C(CH3)=CHCH3]}{N(SiiPr3)(SiiPr2Et)}][Al{OC(CF3)3}4](1-Dy)を報告する。計算によって、1-DyUeff値は電荷密度の高いアミド配位子に起因しており、ペンダントアルケンは弱いエクアトリアル相互作用のみを課しつつ大きなN–Dy–N角を強制する構造的役割を担っていることが示された。これが、現行の90 K以上での最良の単分子磁石よりも最高で100倍遅い分子スピンダイナミクスにつながっている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度