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発生:母体の鉄欠乏はマウス胚で雄から雌への性転換を引き起こす

Nature 643, 8070 doi: 10.1038/s41586-025-09063-2

二価鉄(Fe2+)は、DNAやタンパク質の脱メチル化のようなさまざまな酸化還元酵素反応に関わっていて、あらゆる真核細胞にとって不可欠な要素である。雄の性決定の際に、発生中の生殖腺でY染色体上の性決定遺伝子Sryが正常なエピジェネティック制御を受けるには、ヒストンの脱メチル化が必要である。今回我々は、哺乳類における鉄代謝、ヒストン脱メチル化と性決定の間にどのような関わりがあるかを調べた。その結果、性決定期に、マウス胚の生殖腺でFe2+産生経路が大幅に活性化されていることが分かった。培養したXY生殖腺で鉄をキレート化により除くと、KDM3Aを介したSryのH3K9の脱メチル化レベルが低下し、Sryがほとんど発現しなくなり、生殖腺が卵巣マーカーを発現するようになった。in vivoでは、胎仔のXY生殖腺体細胞で鉄の取り込みに必要な遺伝子Tfrcを条件的に欠失させたり、妊娠中のマウスで鉄の取り込みを薬剤を用いて急激に抑制したりすると、一部の仔において雄から雌へと生殖腺の性転換が起こった。この結果から、鉄代謝が雄の性決定に極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、妊娠マウスへの鉄欠乏食の長期間投与は、それ自体では何も影響が観察されないKdm3aのヘテロ接合変異と組み合わさった場合には、Sry発現が抑制され、一部の仔では雄から雌への性転換が引き起こされた。このように、母体の食餌中の鉄と胎仔の発生結果の間には関連があることが明らかになった。

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