分子生物学:生細胞とニューロンでの空間トランスクリプトームのプログラム可能な制御
Nature 643, 8070 doi: 10.1038/s41586-025-09020-z
RNAの空間的組織化は、多様な細胞過程や疾患で重要な役割を果たしている。しかし、特定の細胞内領域で内因性RNAを摂動する技術が限られているため、空間トランスクリプトームの機能的意義はまだほとんど調べられていない。今回我々は、RNA誘導性でヌクレアーゼ活性を持たないdCas13を用いて、生細胞内で内因性RNAの局在をプログラム化して制御することが出来るシステムであるCRISPR-TO(CRISPR-mediated transcriptome organization)を示す。CRISPR-TOは多様な細胞タイプにわたって、ミトコンドリア外膜、pボディー、ストレス顆粒、テロメア、核内ストレス体などのさまざまな細胞内区画を標的として、内因性RNAを局在させることができる。CRISPR-TOはまた、モータータンパク質を介して、微小管に沿った双方向のRNA輸送を誘導的かつ可逆的に行うことができ、これによって、生細胞でRNA局在動態のリアルタイムでの操作とモニタリングが可能となる。一次皮質ニューロンでは、再配置されたmRNAは神経突起に沿って、および神経突起の先端で局所的に翻訳され、リボソームと共輸送され、βアクチンmRNAを局在させると糸状仮足の動的な突出形成が強まり、軸索再生が阻害されることが分かった。CRISPR-TOにより可能になった初代ニューロンでのスクリーニングでは、Stmn2 mRNAの局在が神経突起伸長のドライバーであることが明らかになった。CRISPR-TOは空間トランスクリプトームの大規模な摂動を可能にすることで、塩基配列解読技術と画像化技術の間に残されている重要なギャップを橋渡しし、生細胞と個体内でRNA局在の機能解析をハイスループットで行うための使い道の多いプラットフォームとなる。

