免疫学:グリオブラストーマによって誘導されたアストロサイトは腫瘍特異的T細胞免疫を抑制する
Nature 643, 8070 doi: 10.1038/s41586-025-08997-x
グリオブラストーマ(神経膠芽腫)は最もありふれたアグレッシブな原発性脳腫瘍であり、治療に対してほとんど応答を示さない。この限定的な治療応答の一因となっているのは、グリオブラストーマ内の免疫抑制性の腫瘍微小環境である。アストロサイトは中枢神経系に豊富に存在し、免疫調節に重要な役割を担っている。しかし、グリオブラストーマに対する免疫応答におけるアストロサイトの役割については、ほとんど分かっていない。本研究で我々は、グリオブラストーマの臨床試料と前臨床モデル試料の単一細胞およびバルクのRNA塩基配列解読、マルチプレックス免疫蛍光法、in vivoでのCRISPRベースの細胞特異的遺伝学的摂動、マウスとヒトのin vitro実験系モデルを用いて、この知識の欠落を埋めることに取り組んだ。その結果、細胞死受容体リガンドであるTRAILを介してT細胞のアポトーシスを誘導することにより腫瘍免疫を制限する、アストロサイトのサブセットが特定された。また、腫瘍細胞が産生するIL-11が、アストロサイトでのSTAT3依存的なTRAIL発現のドライバーであることが明らかになった。アストロサイトでのSTAT3を介したシグナル伝達とTRAILの発現は、グリオブラストーマ患者での再発までの期間の短縮と全生存率の低下に関連していた。アストロサイトでIL-11受容体あるいはTRAILを遺伝学的に不活性化すると、グリブラストーママウスモデルで生存が延長し、T細胞応答とマクロファージ応答が増強された。さらに、腫瘍微小環境内でTRAILを阻害する一本鎖抗体を発現するように改変した腫瘍溶解性HSV-1ウイルスを用いた治療により、グリオブラストーマの前臨床モデルで生存が延長し、腫瘍特異的免疫が増強された。まとめると、IL-11–STAT3で駆動されたアストロサイトは、TRAIL依存的にT細胞のアポトーシスを誘導することでグリオブラストーマ特異的な防御免疫を抑制し、アストロサイトが駆動するこの腫瘍免疫回避機構の標的化に治療用に改変したウイルスを使用できることが明らかになった。

