Article

生態学:漁業に起因した集合的記憶の喪失に続く、ニシンの産卵場所の極方向への移動

Nature 642, 8069 doi: 10.1038/s41586-025-08983-3

群泳する回遊魚において、同調は、適した生息場所への回遊経路が経産個体から初回産卵個体へと社会的学習を介して伝達される過程である。従って、より年齢の高い個体を漁獲対象とする選択的漁業は、集合的記憶の喪失と回遊文化の破壊につながる可能性がある。世界最大のニシン個体群である、ノルウェーのタイセイヨウニシン(Clupea harengus)の個体群は従来、同国北部の越冬海域から最大1300 km南下して、西海岸で産卵してきた。こうした伝統的な戦略は、高エネルギーの遊泳コストと、改善された成長条件下での仔魚の生存率の向上の間のトレードオフであると提案されている。今回我々は、漁業、科学調査、標識実験で得られた広範なデータを解析し、主な産卵場所が突然極方向へ約800 km移動したことを示す。この新たな回遊は、年齢選択的な漁業に起因してより高齢な魚の個体数が極めて少なくなった時に、コホートの大規模な加入があったことにより確立された。文化の伝達に必要な記憶の閾値がおそらく満たされなかったと見られ、この状況は、回遊の制約や気候変動によって駆動される高齢個体と加入個体の間の時空間的な重なりの減少によって、さらに悪化した。加えて、より高齢の世代で生き残った数少ない個体は、従来とは逆に、加入個体の回遊文化を採用していた。これは、生産および沿岸生態系に深刻な結果をもたらす可能性があり、群泳する回遊魚の管理に課題を突き付けている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度