がん:がん遺伝子の異常は髄芽腫のプログレッションを促すがイニシエーションは促進しない
Nature 642, 8069 doi: 10.1038/s41586-025-08973-5
疾患生物学における近年の進歩にもかかわらず、グループ3/4の髄芽腫の扱いは依然として、小児神経腫瘍の治療における難問であり続けている。バルクのオミクス手法では、グループ3/4髄芽腫に重要な腫瘍内不均一性が見つかっており、発がんドライバーが明確に単一遺伝子である症例はごく一部で、ほとんどの場合、大規模なコピー数異常が広がっていることが明らかにされている。しかし、腫瘍内不均一性、発がん性遺伝子異常の役割、腫瘍進化と治療抵抗性における広範なコピー数多型については、ほとんど分かっていない。今回我々は、こうした相互作用を解明するために、がん遺伝子MYC、MYCN、PRDM6に既知の変異があるグループ3/4髄芽腫のコホートに対して、単一核RNA塩基配列解読(snRNA-seq)、単一核ATAC-seq(assay for transposase-accessible chromatin with sequencing、snATAC-seq)および空間トランスクリプトミクスという一連の単一細胞技術を用いた。その結果、大規模な染色体異常は初期の腫瘍イニシエーション事象であるのに対して、単一遺伝子の発がん性事象は後から生じ、典型的にはサブクローン性だが、疾患のプログレッションに伴ってMYCはクローン性になり、腫瘍発生と治療抵抗性をさらに促す可能性があることが明らかになった。空間トランスクリプトミクスでは、大部分のサブクローンは腫瘍組織全体に散在しているが、はっきり分離している場合もあることが分かった。我々は集団遺伝学モデルを用いて、妊娠第1三半期から始まる小脳の単極性刷毛細胞系譜で髄芽腫が開始されると推定した。我々の知見は、この致死的疾患の早期検出と診断に、単一細胞技術がどのように使えるのかを実証している。

