ウイルス学:MERS-CoV様ミンクコロナウイルスはACE2を侵入受容体として用いる
Nature 642, 8068 doi: 10.1038/s41586-025-09007-w
コウモリ由来のコロナウイルスがヒトへの伝播を促進するためには、中間宿主を必要とすることが多いという証拠が蓄積しているが、人獣共通感染するコロナウイルスの異種間伝播(スピルオーバー)に毛皮動物が関わっている可能性についてはほとんど見過ごされてきた。本論文で我々は、肺炎を発症している養殖ミンクから、これまでに報告のないミンク呼吸器コロナウイルス(MRCoV)を単離し、その特性解析を行った結果について報告する。MRCoVはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)を侵入受容体として用い、ミンクやコウモリ、サル、ヒトの細胞に感染できる点は重要である。クライオ電子顕微鏡の解析では、MRCoVの受容体結合ドメイン(RBD)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のRBDと構造的な違いがあるものの、ACE2受容体上でこれと同じ境界面に結合することが明らかとなった。我々はまた、MRCoVのRBDとACE2上の効率的な結合をもたらす重要な決定要因を特定した。MRCoVに近縁なコウモリコロナウイルスHKU5-33Sは、細胞への侵入にアブラコウモリ(Pipistrellus abramus)のACE2を使い、ミンクACE2への適応に必要なアミノ酸置換は2つだけであった。SARS-CoV-2のプロテアーゼとポリメラーゼの阻害剤はMRCoV感染を強力に阻止し、これによって治療戦略としての可能性が示された。まとめるとこれらの知見は、コロナウイルス受容体の動態に関する理解を深めるとともに、それらには人獣共通感染の可能性があることを浮き彫りにしている。毛皮農場が新興病原体のリザーバーとしてもたらすリスクを考えると、我々の研究は、今後のコロナウイルスのアウトブレイク(集団発生)を軽減するためにサーベイランスを強化する必要性を示している。

