細胞生物学:DNA複製と遺伝するDNA損傷を複数世代にわたる細胞で追跡する
Nature 642, 8068 doi: 10.1038/s41586-025-08986-0
細胞の不均一性は、生命に広く共通する特徴である。細胞間の違いに影響される生物学的過程は、発生の可塑性から腫瘍の不均一性や薬剤応答の差異まで多様だが、何が細胞に不均一性をもたらすのかは、いまだにほとんど分かっていない。がんの(エピ)ゲノミクスで得られる変異やエピジェネティック標識の特徴は、がんゲノムの進化を形作った過程を推測する際には非常に有用だが、後ろ向き解析で細胞の不均一性がどのように生じ、その後の細胞世代に広まったかを解明するのは難しい。今回我々は、内因性標識したタンパク質と特別設計の計算ツールを使って、複数世代にわたる単一細胞追跡を行い、発がん性につながるDNA複製の乱れが、姉妹細胞の非対称性と表現型の不均一性を引き起こす仕組みを明らかにした。デュアルCRISPRをベースとするゲノム編集を行うことにより、DNA複製パターンと遺伝性の内因性DNA損傷を同時に追跡することが可能になった。同期せずに増殖させた細胞で最長4世代にわたって細胞系統樹を追跡し、時間分解系統解析を細胞周期とDNA損傷マーカーの反復染色を介した終点測定と組み合わせて行った。その結果、細胞の複数世代にわたって、複製と修復の動態、損傷の遺伝、姉妹細胞の不均一性の出現が明らかになっただけでなく、単一細胞レベルのトランスクリプトミクスと組み合わせることにより、広く見られる発がん性事象が、倍数化に至る複数の経路の引き金となり、ゲノムの完全性に異なった結果をもたらす仕組みが詳しく明らかになった。この研究によって、表現型の可塑性を単一細胞レベルで詳しく調べるための枠組みが得られ、がんの発生の初期事象に似ている可能性のある細胞過程が明らかになった。

