神経科学:希少なヘテロ接合性ニューレキシン1の欠失がもたらす表現型の複雑性
Nature 642, 8068 doi: 10.1038/s41586-025-08864-9
神経精神疾患のリスクと有意に関連した遺伝子が多数あることを考えると、重要で未解決の疑問は、同一遺伝子に影響を及ぼすこともあるさまざまな変異が、どの程度、個別化治療戦略を必要とするかということである。本論文で我々は、脳で重要なシナプスオーガナイザーとして働くシナプス前細胞接着タンパク質をコードするNRXN1のヘテロ接合性欠損をもたらす、神経精神疾患に関連した希少なコピー数バリアント(2p16.3)を取り上げて、この問題を考察する。NRXN1の選択的スプライシングの複雑なパターンは、多様な神経回路の成立の基盤となっており、脳の細胞タイプ間で違いがあり、特定の個体でしか見られない(非反復性の)欠失によって異なる影響を受ける。NRXN1の患者特異的な変異の細胞タイプ特異的な影響を、ヒト誘導多能性幹細胞を用いて比較した結果、NRXN1スプライシングの摂動が細胞タイプ特異的なシナプスへの影響に相違をもたらすことが見いだされた。NRXN1+/−の欠失は、別個な機能欠失(LOF)および機能獲得(GOF)機構を介してグルタミン酸作動性ニューロンのシナプス活動の低下を引き起こしたが、GABA作動性ニューロンではシナプス活動の増大を引き起こした。我々は、相互的同質遺伝子操作により、スプライシングの異常がこれらのシナプス活動の変化をもたらすことを因果的に実証した。NRXN1の欠失に関しては、そしておそらくより広範にも、野生型を増やしたり変異型を除去したりすることによって患者個別的なNRXN1アイソフォームレパートリー復元を達成するためには、精密医療においてその遺伝子変異がLOF機構とGOF機構のいずれによって作用するかに基づく患者の階層分類が必要となるだろう。脳疾患において、LOFとGOFの両方の機構を生じると予想される変異の数が増えていることを踏まえると、今回の知見は今後の精密医療ついての考察に微妙な意味を加えるものである。

