量子物理学:(2 + 1)Dリュードベリ量子シミュレーターにおける弦の切断の観測
Nature 642, 8067 doi: 10.1038/s41586-025-09051-6
格子ゲージ理論(LGT)は、物性物理学や素粒子物理学における広範な現象を記述する。その顕著な例が、陽子や中性子といったハドロンの内部でクォークを束縛する原因となる閉じ込めである。クォーク–反クォーク対が分離していくと、それらを結び付けているグルーオン場の弦に蓄積されたエネルギーはその距離とともに線形に増加し、最終的には真空から新たな対を生成するのに十分なエネルギーに達して、この弦が切断される。こうした現象はLGTに普遍であるが、その結果生じるダイナミクスをシミュレートすることは困難な課題である。今回我々は、中性原子アレイを用いたプログラム可能な量子シミュレーターを使用して、人工量子物質において弦の切断を観測したことを報告する。我々は、原子をカゴメ格子の幾何学配置にすると、ダイナミクス的な物質による(2 + 1)次元LGTが効率的に実装でき、リュードベリブロッケードから局所U(1)対称性が出現することを示す。長距離のリュードベリ相互作用により、電荷の対に対して線形の閉じ込めポテンシャルが自然に生じ、これによって電荷の質量と弦の張力の両方を調整することが可能になる。我々は、欠陥の存在下で原子アレイの基底状態を断熱的に準備することによって、平衡状態における弦の切断を実験的に調べ、ゆらぐ弦に支配される閉じ込め相内部の領域と、切断された弦の配置に支配される閉じ込め相内部の領域とを区別した。さらに我々は、原子のデチューニングの局所的な制御を利用することで、弦の状態をクエンチし、多体共鳴現象を示す弦の切断ダイナミクスを観測した。今回の成果は、プログラム可能な量子シミュレーターを用いて高エネルギー物理学の現象を調べる機会を提供するものである。

