Article

腫瘍生物学:リソソーム内の鉄の活性化はがんにおいてフェロトーシスを誘導する

Nature 642, 8067 doi: 10.1038/s41586-025-08974-4

鉄は生物学的膜で脂質の酸化を触媒し、フェロトーシスと呼ばれる形態の細胞死を促進する。この化学反応が細胞内のどこで起こるのかを明らかにすることは、さまざまな疾患が関連する場面においてフェロトーシスの誘導や抑制を可能にする薬剤の設計に役立つ。遺伝学的手法がフェロトーシスの抑制因子を明らかにしてきた一方で、小分子はこの進行中の化学反応の時空間的な制御を可能にする。本論文で我々は、フェロトーシス阻害剤であるリプロキスタチン1(liproxstatin-1)が、リソソームで鉄を不活化することによって細胞保護効果を発揮することを示す。我々はまた、フェロトーシス誘導剤であるRSL3が、リソソームで膜脂質の酸化を起こすことも示す。我々は、リン脂質の酸化的分解を誘導し、最終的にフェロトーシスを誘導するリソソーム内の鉄に対する小分子活性化剤フェントマイシン1を設計した。鉄を豊富に含むCD44highの肉腫や膵管腺がんの初代細胞は転移と薬剤耐性を促す可能性があり、フェントマイシン1はこれらの細胞を殺傷することができる。そのような細胞では、鉄は細胞の適応を調節する一方で、フェロトーシスに対する脆弱性を付与する。亜致死量のフェントマイシン1に曝露した肉腫細胞は、間葉系マーカーの発現低下と膜損傷応答の活性化を特徴とするフェロトーシス抵抗性の細胞状態を獲得した。このリン脂質分解剤はin vitroで薬剤耐性持続生残がん細胞を排除することが可能で、乳がん転移のマウスモデルでリンパ節内の腫瘍増殖を軽減した。まとめるとこれらの結果は、鉄の反応性の制御は治療有益性をもたらすことを示しており、リソソーム内の鉄がドラッガブルな標的になることを明らかにするとともに、細胞状態を標的にする意義を浮き彫りにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度