Article

疫学:炎症性腸疾患の疫学段階にわたる世界規模での進展

Nature 642, 8067 doi: 10.1038/s41586-025-08940-0

20世紀には、炎症性腸疾患(IBD)は、北米、ヨーロッパ、オセアニアで初期に工業化した地域の疾患だと考えられていた。21世紀に入ると、IBDの発症率はアフリカ、アジア、ラテンアメリカの新たな工業化地域や新興地域で増加し、初期工業化地域での有病率も着実に増加し続けた。その発症率と有病率の変化によって、IBDの推移は4つの疫学段階に分けられる。まず、低い発症率と有病率を特徴とする第1段階(出現期)、発症率の急増と低い有病率を特徴とする第2段階(発症急増期)、発症率は減速、頭打ち、または減少に転じるが、有病率は着実に増加する第3段階(有病率増加期)がある。そして、高齢化するIBD患者集団における人口動態変化により、有病率の増加率が頭打ちになる第4段階(有病率平衡期)が提唱されているが、まだ実証はされていない。今のところ、これらの段階は理論上のものであり、移行点を定義する具体的な数値指標は存在しない。今回我々は、世界の82地域を網羅した1世紀以上(1920~2024年)にわたる522件の人口ベース研究からのリアルワールドのデータを用いて、第1〜3段階にわたる時間的空間的な移行を示し、第4段階の進行をモデル化した。IBDの疫学段階ごとの推移を理解することによって、医療システムは将来的な世界規模でのIBDの負担に対してより適切に備えることが可能となる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度