生物学的手法:ディープ・ビジュアル・プロテオミクスによる遺伝性肝疾患のタンパク質毒性のマッピング
Nature 642, 8067 doi: 10.1038/s41586-025-08885-4
α1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)などの、タンパク質の折りたたみ異常(ミスフォールディング)が原因の疾患は重大な健康問題をもたらすが、その細胞レベルでの疾患進行についてはまだほとんど解明されていない。今回我々は、質量分析法による空間プロテオミクスと機械学習を用いて、ヒト肝臓組織中のAATDをマッピングした。我々は、ディープ・ビジュアル・プロテオミクス(DVP)と単一細胞解析を組み合わせて無傷の患者生検を調べ、繊維化段階全体にわたって肝細胞ストレスの間に起こる分子事象を擬似時間で明らかにした。ホルマリン固定パラフィン包埋組織中の単一細胞の3分の1から、最大でタンパク質4300個というプロテオーム深度を達成した。このデータセットから、カノニカルな小胞体ストレス応答に先行し、臨床での治療標的となり得るペルオキシソームの上方調節が明らかになった。我々の単一細胞プロテオミクスデータは、α1-アンチトリプシンの蓄積はおおむね細胞固有であり、肝細胞間のストレス伝播は最小限であることを示している。プロテオームデータと、人工知能を用いた画像ベースの表現型解析(複数の疾患段階にわたる)を統合することで、球状のタンパク質凝集体と個々のプロテオームシグネチャー(特に、TNFSF10〔別名TRAIL〕量の増加)を特徴とする疾患後期の肝細胞表現型が明らかになった。この表現型は、重要な疾患進行段階を示している可能性がある。我々の研究は、AATDの発生病理に新たな知見をもたらし、複雑な組織の高分解能でのin situプロテオーム解析に対する強力な方法論を導入している。この方法は、さまざまなタンパク質のミスフォールディングを原因とする疾患の分子機構を解明する可能性があり、ヒト組織における単一細胞レベルでの疾患進行を理解するための新たな基準を打ち立てている。

