構造生物学:時間分解クライオ電子顕微鏡によって直接明らかにされたミオシンのスイングレバー機構
Nature 642, 8067 doi: 10.1038/s41586-025-08876-5
ミオシンは、細胞内でFアクチンとの相互作用を介して力と動きを生み出す。動きは、アクチンが触媒するミオシンの変換を介して生じると考えられており、ミオシンはATPによって生じたプライミング状態(パワーストローク前)からパワーストローク後の状態へと、アクチンの触媒としての働きによって変換され、これはミオシンレバーの揺れ(スイング)を伴っている。しかし当初のプライミングされたアクトミオシン状態はこれまで観察されたことがなく、アクチンがミオシンのATPアーゼ活性を触媒する機構は分かっていない。今回我々は、これらの問題に取り組むために、加水分解生成物の解離が遅いミオシン-5変異体の時間分解クライオ電子顕微鏡(クライオEM)観察を行った。プライミングされたアクトミオシンの大部分が捕捉されたのは、プライミングされたミオシンをF-アクチンと混合した10 ms後だったが、パワーストローク後にアクトミオシンが優位を占めるようになったのは120 ms後で、中間体が大量に存在する状態は検出されなかった。次いで、詳細な解釈を行うためにクライオEMマップを擬似原子モデルにフィットさせた。プライミングされたモーターがその下方の50 kDaサブドメインを介してアクチンへと結合するのに伴って小さいが重要な変化が起こり、アクチンが結合する裂け目が開き、リン酸の解離が阻害された。アミノ末端アクチンとミオシンとの相互作用により、上方にある50 kDaサブドメインの回転が促進され、アクチンが結合する裂け目が閉じて、リン酸の解離が可能になった。上方にある50 kDaサブドメインとアクチンの間の相互作用形成によって、効果的な力発生に必要な強く結合している界面が形成される。ミオシン-5レバーは、主にアクチン軸に沿って振れるように93°移動して、ねじれはほとんどない。レバーの揺れの規模は、アクチンに沿ったミオシン-5の動きの典型的なステップ長に適合した。これらの時間分解構造により、揺れるレバーによる機構が明らかにされ、パワーストロークの構造的移行が説明され、ミオシンが動きを生み出す仕組みについての数十年にわたる推測が裏付けられた。

