創薬:RAS変異を持つがんでSHOC2とRASの相互作用を標的にする
Nature 642, 8066 doi: 10.1038/s41586-025-08931-1
RAS(rat sarcoma)遺伝子であるHRAS、NRASおよびKRASの活性化変異は、ヒトのがんで最も頻繁に見られる発がん性ドライバーとしてまとめられる。これらは、以前は創薬不可能な標的分子と考えられてきたが、ここ数年の進歩がKRAS(G12C)変異体、KRAS(G12D)変異体を標的とする薬剤の臨床開発につながり、忍容性のある用量で、期待できる治療反応が得られている。しかし、黒色腫の発がんドライバー変異として2番目に多いNRAS(Q61*)変異体(*は任意のアミノ酸を表す)を選択的に標的とする臨床薬はまだ得られていない。今回我々は、SHOC2–MRAS–PP1C複合体の成分であるSHOC2が、RAS(Q61*)腫瘍が依存する因子であることを突き止めた。この依存は、ヌクレオチド状態に応じて決まるが、アイソフォームには無関係である。その機構として、発がん性のNRAS(Q61R)はSHOC2と直接的に相互作用することが、X線共結晶構造によって判明した。そして、in vitroでのハイスループットスクリーニングによって、SHOC2に結合してNRAS(Q61*)との相互作用を破壊する小型分子が見つかった。構造に基づく最適化によって、RAS変異を持つがんモデル、特にNRAS(Q61*)という状況では、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達と増殖の阻害が見られ、細胞内で活性を示すツール化合物を得ることができた。これらの知見によって、新しい形態形質を持つSHOC2とカノニカルなRASタンパク質の相互作用ががんの維持に重要であり、薬理学的に標的化できることが証明された。総合するとこの研究によって、RASシグナル伝達経路の核心で作用する新しい治療法開発の概念の検証がなされ、基盤が整った。

