認知神経科学:意識についてのグローバル・ニューロナル・ワークスペース理論と統合情報理論の対抗的検証
Nature 642, 8066 doi: 10.1038/s41586-025-08888-1
脳の活動からどのようにして主観的体験が生じるのかを説明する理論は、複数存在する。各理論は独自に証拠を重ねているが、理論間で直接の比較がなされたことはない。今回我々は、理論に中立なコンソーシアムを仲立ちに、統合情報理論(IIT)とグローバル・ニューロナル・ネットワーク理論(GNWT)を直接並置して、オープンサイエンスの対抗者間共同作業を行った。両理論の主唱者とコンソーシアムは、実験の企画、種々の予想、期待される結果、その解釈を立てて、それらをあらかじめ記録した。参加者(n = 256人)は、機能的磁気共鳴画像法、脳磁図、頭蓋内脳電図による神経活動計測を受けながら、さまざまな持続時間にわたって超閾値刺激を視認した。その結果、視覚皮質、腹側側頭皮質、下前頭皮質で意識内容についての情報が、頭頂皮質と外側側頭皮質で刺激持続時間を反映した持続的応答が、そして、前頭野と初期視覚野間で内容特異的な同期活動が見られた。これらの結果は、IITとGNWTの予測の一部と合致したが、両理論のカギとなる原理には少なからぬ疑問を投げ掛けるものだった。IITについては、後頭皮質内の持続的同期の欠如が、ネットワークの接続性が意識を決めるとする主張と矛盾した。一方、GNWTについては、刺激開始時の発火が一般的に見られないことや、前頭前皮質で特定の意識の次元がほとんど表現されていないことが矛盾した。これらの相違は、今回試験した予想の一部を共有する他の意識理論にも当てはまる。我々は、既存の理論に疑問を投げ掛けるだけでなく、認知神経科学を推進するために、原理を備え理論に導かれた共同研究を介した別の手法を提唱し、体系的な理論の検証と構築に向けて定量的枠組みが必要性であることを強調する。

