進化学:ピキュリス・プエブロ部族の口述史とゲノミクスから明らかになった米国南西部の遺伝的連続性
Nature 642, 8066 doi: 10.1038/s41586-025-08791-9
先住民族は、口述史に基づいて祖先的な主張や文化的な帰属の主張を行う際、特にそうした物語が歴史的に軽んじられてきた米国では、大きな困難に直面することが多い。古DNAは、伝統的な知識を補完し、口述史の空白部分に取り組むためのツールになるが、先住民の主権や信仰が長年にわたり軽視されてきたため、当然のことながら多くの先住民コミュニティーはDNA研究への不信感を抱いている。以前の研究では、返還請求に重点が置かれることが多かったが、最近の研究は部族の歴史を深めるのを目指すことが増えてきている。今回我々は、米国ニューメキシコ州リオ・グランデ川流域北部に居住する、連邦政府が主権国家として認めるアメリカ先住民ピキュリス・プエブロ部族の主導によって共同研究を行い、伝統的な知識における空白を埋めるとともに、この集団の歴史や祖先系統の理解を深めた。ピキュリス・プエブロ部族の遺跡で発見された16個体と、現在のピキュリス・プエブロ部族構成員13人のゲノムが作製され、過去1000年にわたるゲノムデータが得られた。その結果、ピキュリス・プエブロ部族の過去の人々と現在の構成員の間の遺伝的連続性が明らかになり、より広くは、この系統の連続性が西に275 km離れたチャコ・キャニオンのプエブロ・ボニート遺跡で見つかった先プエブロ人まで及ぶことが示された。これは、これら北米南西部のプエブロ族集団の間に確固たる時空間的な結び付きがあることを示唆している。さらに、ヨーロッパ人が到達する前に集団が衰退した証拠も、紀元1500年以前の個体にアサバスカ語族系統を示す証拠も見られなかったことから、以前の移住仮説に疑問が投げ掛けられた。今回の研究は、先住民による遺伝的データの管理を優先し、口述伝承、考古学、民族学、遺伝学をまとめたものである。

